Book Review 28-1 # SF ゲームの王国 『ゲームの王国』(小川哲著)を読んでみた。第38回日本SF大賞受賞、第31回山本周五郎賞受賞。 本書を読む前に、同じ著者の『地図と拳』、『君のクイズ』を読んでいた。『地図と拳』では体温に興味を示し、母親がその興…

Book Review 27-1ノンフィクション # 黒い海 『黒い海』(伊澤理江著)を読んでみた。 著者は、現在はネットメディア、新聞、ラジオ等で取材・執筆活動を行っている。英国ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 本書は、日本の重大…

Book Review 15-2歴史小説 # 友よ 『友よ』(赤神諒著)を読んでみた。 著者は『大友二階崩れ』、『大友の聖将』、『大友落月記』で、西の大国・大友氏の国を揺るがすお家騒動の中で、「義」を愚直なまでに貫こうとした家臣の行動を描いて感動を呼んだ。 本…

Book Review 26-1ディストピア # AI監獄ウイグル 『AI監獄ウイグル』(ジェフリー・ケイン著)を読んでみた。著者は米国人の調査報道ジャーナリスト。アジアと中東地域を取材し、多数の雑誌・新聞に寄稿している。 本書を読むと中国の漢民族以外の居住地がデ…

Book Review 25-1 音楽 # ページをめくるとジャズが聞こえる 『ページをめくるとジャズが聞こえる』(村井康司著)を読んでみた。 著者は函館出身。大学時代はジャズ・ビッグバンドでギターと編曲を担当。大学音楽表現学科講師。 久しぶりに札幌中央図書館に…

Book Review 19-2絵本 # てぶくろ 『てぶくろ』(ウクライナ民話)を読んでみた。本書は、2022年のロシアのウクライナ侵攻で、注目を浴びているようだ。 話の筋は、おじいさんの落とした片方の手袋に「ぼくも入れて」と次々に鼠、蛙、兎、狐、狼、猪と順に入…

Book Review 24-1 歴史 # 人類の起源 『人類の起源』(篠田謙一著)を読んでみた。 2022年のノーベル生理学・医学賞が、DNAを用いた人類遺伝研究者(ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ博士)に贈られたことは記憶に新しい。4万…

Book Review 23-1 日常の謎 # 中野のお父さんの快刀乱麻 『中野のお父さんの快刀乱麻』(北村薫著)を読んでみた。 編集者として働く女性が出会った日常の謎や文学の謎を中野に住む父親が解決するシリーズ。現在、3冊出版されている。『中野のお父さん』、…

Book Review 22-1環境 # サイレント・アース 『サイレント・アース』(ディブ・グールソン著)を読んでみた。副題は昆虫たちの「沈黙の春」だ。「昆虫が消えたら、世界は動きを止める」 『沈黙の春』といえば、レーチェル・カーソン(1907-1964年)。海洋生…

Book Review 21-1家族 # ラスト・チャイルド 『ラスト・チャイルド』(ジョン・ハート著)を読んでみた。本書は英国推理作家協会最優秀スリラー賞を受賞。 主人公の13歳の少年が、行方不明になった双子の妹を1年間探し続けている。父親も妹がいなくなったあ…

Book Review 20-1 ミステリー # ミスティック・リバー 『ミスティック・リバー』(デニス・ルヘイン著)を読んでみた。2001年出版。 帯の文句がすごい。「この一冊がミステリを変えた」「もうルヘインなしでは生きられない(S.キング)」「必読の一冊。なん…

Movie Review 2 # ドライブ・マイ・カー 『ドライブ・マイ・カー(濱口竜介監督)』のDVDを購入し鑑賞した。 村上春樹原作を映画化し、第74回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞と知ったのが鑑賞のきっかけである。DVDを購入したが、時間が取れず、先に原作を読む…

Book Review 16-5人物 # 古今亭志ん生 『なめくじ艦隊』(1953年発行)を読んでみた。本書は弟子の初代金原亭馬の助による聞き書きである。 古今亭志ん生は1890年の生まれ。本名は美濃部孝蔵。美濃部家は徳川直参旗本であった。博打や酒に手を出し、放蕩生活…

Book Review 16-4人物 # 西川一三 『天路の旅人』(沢木耕太郎著)を読んでみた。著者は有名なルポライター。『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、『一瞬の夏』で新田次郎文学賞を受賞。その後、『深夜特急』シリーズで紀行文を出版し、多大な読…

Book Review 16-3 人物 # 尾崎放哉(おざき ほうさい) 『海も暮れきる』(吉村昭著)を読んでみた。 尾崎放哉の人生をまとめると、「酔漢」「結核」「自由律俳句」となろう。著者の吉村昭氏も青年期に結核で生死の境を彷徨ったため、尾崎放哉に興味をもったよ…

Book Review 9-14 医療 # 維新京都医学事始 『維新京都医学事始』(山崎悠人著)を読んでみた。京都府立医大卒の医師。本作が初の小説だそうだ。 本書導入は1888年、森鴎外との会食場面から始まる。ポンペ、ベルツ等の医学史で学んだ医師名が出てくる。 時を…

Book Review 19-1絵本 # クリスマスを探偵と 『クリスマスを探偵と』(伊坂幸太郎著)を読んでみた。 松前図書館のクリスマス特集のコーナーで偶々見つけた。推理小説を書く著者が絵本を書いている。珍しい。大学生の時に書いた小説をリメイクしたのだそうだ…

Book Review 17-3 インテリジェンス小説 007 カジノ・ロワイヤル 『007 カジノ・ロワイヤル』(イアン・フレミング著)を読んでみた。 007の第1作である。その後、フレミングによる11冊の小説と2冊の短編小説集が出版されている。 英国の諜報員がCIAとフラン…

Book Review 9-13 医療 清浄島 『清浄島』(川﨑秋子著)を読んでみた。著者は北海道別海町出身。北海道を舞台にした小説で数々の文学賞を獲得している。『土に贖う』は私の大好きな短編集である。 本書はエキノコッカスの流行拡大を防止するために活動した…

Book Review 9-12 医療 When we do harm 『医療エラーはなぜ起きるのか(When We Do Harm)』(Danielle Ofri著)を読んでみた。著者は内科医。ニューヨーク大学医学部臨床教授。 本書は、2例の誤診例を時系列に提示し、その途中に章を挟んでに誤診について…

Book Review 17-2 インテリジェンス小説 英国諜報員アシュンデン 『英国諜報員アシュンデン』(サマセット・モーム著)を読んでみた。 著者は、有名な英国の大作家・劇作家。インテリジェンスに関わっていたという過去がある。その経験をもとにスパイが主人…

Book Review 9-11 医療 The Reflective Practitioner: How Professionals Think in Action.1983年に出版。 『専門家の知恵』(ドナルド・ショーン著)を再読してみた。教育学者(東京大学教授)である佐藤学氏の翻訳であるが、全訳ではなく、理論の中核が提…

Book Review 9-10 医療 The Healer’s Art 『医者と患者(The Healer’s Art : A New Approach to the Doctor-Patient Relationship)』(Eric J. Cassell著)を読んでみた。著者は1928年生まれ- 2021年没。内科医。 著者は医学的技術進歩を否定するものではな…

Book Review 9-10 『決められない患者たち(Your Medical Mind : How to decide what is right for you)』(Jerome Groopman & Pamela Hartzband著)を読んでみた。翻訳者は堀内志奈さんで、札幌医科大学卒だそうだ。 本書は治療すべきかどうかについて悩…

Book Review 9-8 『医者は現場でどう考えるか』(Jerome Groopman著)を15年ぶりに再読した。 著者はN Engl Med Jの編集者を歴任している。私は札幌医大在籍中に原著(How Doctors Think, 2007年)で読んで、内容の一部を学生講義に用いていたが、最近、翻…

Book Review 9-7 最近、誤診に関する本がたくさん出版されている。そこで、『Diagnosis: interpreting the shadows』を読んでみた。その翻訳本「誤診はなくせるのか?」と併せて購入した(ブックレビューで翻訳が稚拙と評価されていたため、原書と翻訳本を購…

Book Review 9-6 『誤診の解体』(Pat Croskerry著)を読んでみた。 最近、誤診についての本が多数出版されている。「診断の改善」は近年世界の医療全体が取り組むべき課題と言われている。この10年でこの領域のキーワードは「診断エラー」であり,人間の認…

Book Review 9-5 『病いの会話』(中村友香著)を読んでみた。これは京都大学大学院のアジア・アフリカ地域研究科で作成した博士論文をもとに書籍化したものである。 医療人類学は日本では多くの医学部で教えられていない。私は、義務年後に自治医科大学大宮…

Book Review 9-4 『グレート・インフルエンザ』(ジョン・バリー著)を読んでみた。 第一次大戦時にスペイン風邪が人類を襲った。スペイン風邪と一般的に言うが、本書はグレート・インフルエンザとしている。 そのころ日本ではどうだったのかは、『感染症の…

Book Review 9-3 『最悪の予感 パンデミックとの闘い』(マイケル・ルイス著)を読んでみた。 本書は現在進行形の新型コロナウイルス感染症への米国の対応を描いている。この対策チームの中心人物だった二人の医師を中心に進むスリリングなノンフィクション…