Book Review 17-2 インテリジェンス小説 英国諜報員アシュンデン

 

『英国諜報員アシュンデン』(サマセット・モーム著)を読んでみた。

著者は、有名な英国の大作家・劇作家。インテリジェンスに関わっていたという過去がある。その経験をもとにスパイが主人公の小説が本書である。(他の作品は未読である。)

ロシア革命第一次大戦の最中。英国のスパイであるアシェンデンは上司Rからの密命を帯び、中立国スイスを拠点としてヨーロッパ各国を渡り歩いている。Rとしか上司の名前が出てこないのが007シリーズを思い出す。

 全編を通じて、派手なアクションや殺人場面は出てこない。現実はこんなものかもしれない。淡々とした筆致で短い章立てでエピソードが書かれてゆく。

それが面白くないかというとそんなことはなく、ついつい次のページを捲ってしまう。この一見地味な作品がその後のスパイ小説の嚆矢となったのだろう。