2022-01-01から1年間の記事一覧

Book Review 9-14 医療 # 維新京都医学事始 『維新京都医学事始』(山崎悠人著)を読んでみた。京都府立医大卒の医師。本作が初の小説だそうだ。 本書導入は1888年、森鴎外との会食場面から始まる。ポンペ、ベルツ等の医学史で学んだ医師名が出てくる。 時を…

Book Review 19-1絵本 # クリスマスを探偵と 『クリスマスを探偵と』(伊坂幸太郎著)を読んでみた。 松前図書館のクリスマス特集のコーナーで偶々見つけた。推理小説を書く著者が絵本を書いている。珍しい。大学生の時に書いた小説をリメイクしたのだそうだ…

Book Review 17-3 インテリジェンス小説 007 カジノ・ロワイヤル 『007 カジノ・ロワイヤル』(イアン・フレミング著)を読んでみた。 007の第1作である。その後、フレミングによる11冊の小説と2冊の短編小説集が出版されている。 英国の諜報員がCIAとフラン…

Book Review 9-13 医療 清浄島 『清浄島』(川﨑秋子著)を読んでみた。著者は北海道別海町出身。北海道を舞台にした小説で数々の文学賞を獲得している。『土に贖う』は私の大好きな短編集である。 本書はエキノコッカスの流行拡大を防止するために活動した…

Book Review 9-12 医療 When we do harm 『医療エラーはなぜ起きるのか(When We Do Harm)』(Danielle Ofri著)を読んでみた。著者は内科医。ニューヨーク大学医学部臨床教授。 本書は、2例の誤診例を時系列に提示し、その途中に章を挟んでに誤診について…

Book Review 17-2 インテリジェンス小説 英国諜報員アシュンデン 『英国諜報員アシュンデン』(サマセット・モーム著)を読んでみた。 著者は、有名な英国の大作家・劇作家。インテリジェンスに関わっていたという過去がある。その経験をもとにスパイが主人…

Book Review 9-11 医療 The Reflective Practitioner: How Professionals Think in Action.1983年に出版。 『専門家の知恵』(ドナルド・ショーン著)を再読してみた。教育学者(東京大学教授)である佐藤学氏の翻訳であるが、全訳ではなく、理論の中核が提…

Book Review 9-10 医療 The Healer’s Art 『医者と患者(The Healer’s Art : A New Approach to the Doctor-Patient Relationship)』(Eric J. Cassell著)を読んでみた。著者は1928年生まれ- 2021年没。内科医。 著者は医学的技術進歩を否定するものではな…

Book Review 9-10 『決められない患者たち(Your Medical Mind : How to decide what is right for you)』(Jerome Groopman & Pamela Hartzband著)を読んでみた。翻訳者は堀内志奈さんで、札幌医科大学卒だそうだ。 本書は治療すべきかどうかについて悩…

Book Review 9-8 『医者は現場でどう考えるか』(Jerome Groopman著)を15年ぶりに再読した。 著者はN Engl Med Jの編集者を歴任している。私は札幌医大在籍中に原著(How Doctors Think, 2007年)で読んで、内容の一部を学生講義に用いていたが、最近、翻…

Book Review 9-7 最近、誤診に関する本がたくさん出版されている。そこで、『Diagnosis: interpreting the shadows』を読んでみた。その翻訳本「誤診はなくせるのか?」と併せて購入した(ブックレビューで翻訳が稚拙と評価されていたため、原書と翻訳本を購…

Book Review 9-6 『誤診の解体』(Pat Croskerry著)を読んでみた。 最近、誤診についての本が多数出版されている。「診断の改善」は近年世界の医療全体が取り組むべき課題と言われている。この10年でこの領域のキーワードは「診断エラー」であり,人間の認…

Book Review 9-5 『病いの会話』(中村友香著)を読んでみた。これは京都大学大学院のアジア・アフリカ地域研究科で作成した博士論文をもとに書籍化したものである。 医療人類学は日本では多くの医学部で教えられていない。私は、義務年後に自治医科大学大宮…

Book Review 9-4 『グレート・インフルエンザ』(ジョン・バリー著)を読んでみた。 第一次大戦時にスペイン風邪が人類を襲った。スペイン風邪と一般的に言うが、本書はグレート・インフルエンザとしている。 そのころ日本ではどうだったのかは、『感染症の…

Book Review 9-3 『最悪の予感 パンデミックとの闘い』(マイケル・ルイス著)を読んでみた。 本書は現在進行形の新型コロナウイルス感染症への米国の対応を描いている。この対策チームの中心人物だった二人の医師を中心に進むスリリングなノンフィクション…

Book Review 9-2 『診断』(リサ・サンダース著)を読んでみた。 これも前作と同様ニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載された医学に関する連載コラム記事である。今回はすべて洛和会音羽病院長の松村理司氏が翻訳にあたっている(NHKの「ドクターG」の…

Book Review 9-1 『患者はだれでも物語る』(リサ・サンダース著)を読んでみた。 これはニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載された医学に関する本当にあった話を一般読者向けに集めた記事である。 早速、症例をみてみよう。 症例1 22歳女性。主訴は「…

YouTube 2 家庭医療/臨床推論

youtu.be

YouTube1 社会と医療/科学性と人間性 上記についてYOUTUBEにupしました。 https://youtu.be/t10hl6dygtY

Book Review 16-1 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか/木村政彦外伝 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』、『木村政彦外伝』(増田俊也著)を読んでみた。 同じ著者の『七帝柔道記』で、寝技柔道の凄さとその練習量のすごさに圧倒された。本書…

Lecture 1&2 についての質疑応答 ○○さんへ ご質問、ありがとうございます。 Q;先生の視点から、今の医学の教育の弱点は? A;根本的問題は、大学にいる教官が、臨床医の立場を優先して、自分たちに教育者という自覚がないことです。それゆえ、教育準備に時間…

Lecture 2-4 科学性と人間性 若者へのメッセージ 大きな食卓の上にたくさんのご馳走が並んでいるが、1メートルもある長い箸が人々の右手にくくりつけられている。この状況は天国も地獄も同じである。天国の人たちは笑顔で、地獄の人たちは苛ついている。その…

Lecture 2-3 科学性と人間性 事例を紹介しよう。60歳の女性が配偶者同伴で受診した。失神発作が起こり、検査の結果、不整脈が原因と判明した。ペースメーカー挿入直後は順調であったが、失神が再発しペースメーカーに不具合があることが判明する。その後、さ…

Lecture 2-2 科学性と人間性 日本以外の医師の診療についての考察を見てみよう。60歳代男性で右手関節痛が主訴である。10年前より、タイプを打つと痛む。右手をドアに挟まれた既往があり医師で著述業でもある。4人の専門医にかかっている。一人目は手の専門…

Lecture 2-1 科学性と人間性 まず、医学雑誌について述べた。医学雑誌の症例報告は苦しんでいる人を必要とする。しかし、科学性を重視するあまり、患者さんの主観的な訴えは省略される。記載された人々の個別的な苦しみは認知されえない。神経内科医で有名な…

Lecture 1-2 社会と医療 ここからは医療の話。「記名力低下、集中力低下で神経内科を受診した38歳の男性。会計士をしていたが、仕事の能率が悪くなり解雇された。6ヶ月前から記名力が低下してきたと妻や友人は証言した。不眠で、夜間足がピクツク。15歳時…

Lecture 1-1 社会と医療 毎年1回、某大学4学年生への講義を4コマ(75分×4)行っている。2020年度はコロナウイルス蔓延の影響で、リモート参加ありの変則で行われたため、教室で受講したものは20名程度であった。 内容は、「社会と医療」、「科学性と人間性…

Book Review 15-1時代小説 真田太平記 『真田太平記 全16冊』(池波正太郎著)を再読してみた。 著者は「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の三大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博している。『定年後読みたい文庫100冊』の著…

Essay 9 患者の論理・医師の論理 事例 44歳女性。「貧血」なので貯蔵鉄の検査をしてほしいとのことで来診。若い頃から赤血球の比重不足で献血ができなかった。5年前、月1回の頻度で3ヶ月間に38度台の発熱や手指の関節痛が出現したためAクリニックを受診…

Essay 8 家庭医を目指す君達へ(私の研修時代) 産婦人科研修中,私に分娩を任され,会陰切開縫合をした妊婦さんが足の痛みを訴え続けたことがあった.精神的に問題のある方かと思って対応していたら,そのうちに足が腫れ上がってきた.指導医が再縫合して事…