Book Review 15-1時代小説 真田太平記

真田太平記 全16冊』(池波正太郎著)を再読してみた。

著者は「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の三大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博している。『定年後読みたい文庫100冊』の著者は、本書を別格9冊の第一に挙げている。真田一族を扱った本は数々あれども本書以上の真田本はいまだないと言い切っている。無類に面白いがその理由であると。

真田昌幸、長男の源三郎信幸、次男の源二郎信繁を中心にした物語である。代々長男の夭折が続いたため、長男の名を三郎としたという。

武勇と知謀に長けた昌幸は、天下の帰趨を探るべく手飼いの真田忍びたちを四方に飛ばせ、新しい時代の主・織田信長にいったんは臣従するのだが、その夏、またも驚天動地の時代が待ちうけていた。甲賀忍び(猫田与助)と真田忍び(お江)の暗闘がサイドストリーとして語られる。そして本能寺の変が起こる。

物語の第一巻は、織田信忠に攻められた高遠城から一武士が奇跡的に脱出するところから始まる。一人の忍びが若者を助ける。忍びの血脈が伏線に話が進んでゆく。父武田信玄に近づこうと焦り、敗戦と挑発を繰り返し領民から見放される武田勝頼。如何せんこのときを、勝頼は失ってしまった。天正10年(1582年)3月、織田・徳川連合軍によって戦国随一の精強さを誇った武田軍団が滅ぼされた。

第二巻で、怪童樋口角兵衛登場。正幸の隠し女お徳の懐妊と妻山手殿との確執。

第四巻で、北条氏への小田原攻め。太閤の一夜城。

第五巻、朝鮮出兵、秀頼誕生。

第六巻、秀吉死去、朝鮮撤退。家康と三成の確執。

第八巻、伏見城陥落。秀忠・兄信幸対父正幸・弟幸村の対決。関ケ原直前、石田三成の幾つかの決断ミスによって、東軍に先手を許してしまう。

第九巻、関ケ原小早川秀秋の裏切り。島津義弘石田三成の不和。島津義弘の家康陣へ向かっての中央突破。裏切って勝ち組となった小早川は間もなく取り潰され、家康へ果敢に攻め込んだ島津は懲罰を受けず、260年後に徳川を滅ぼす。

第十巻。紀州九度山。徳川と決戦する日を待ち構える。真田忍びは家康上洛後の暗殺計画を練る。

第十一巻。真田忍び、家康暗殺計画その後。加藤清正毒殺。真田昌幸病死。

第十二巻。家康からの鐘銘文言へのクレーム。真田幸村大坂入城。

第十三巻。大坂冬の陣真田丸

第十四巻。大坂夏の陣

第十五巻。真田幸村討死。大坂落城。

第十六巻。真田信之徳川幕府の対決。国替え。

本書は週刊朝日に連載されたが、「なるべく長いものを」という依頼であったという。三年の予定が九年かけて完結した。史実に基づきながらも、空白部分を忍びの活躍を入れこむことによって、面白さを増やしているように思える。関ケ原の戦いを挟んだ戦国の歴史の流れを堪能したここ数か月であった。