Book Review 24-14歴史 #暗殺

 

『#暗殺』(柴田哲孝著)を読んでみた。著者は1957年生まれ。2006年『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞日本冒険小説協会大賞、07年『TENGU』で大藪春彦賞を受賞。

 

本書はフィクションであると断り書きがある。しかしながら、安倍晋三元首相銃撃事件の真相を追った作品である。ノンフィクションとすると、過激な推論を書くことができず、命を狙われかねないからであろう。作品では暗殺された元首相の名は別名だが誰が読んでも安倍晋三氏である。犯人名も変えてあるが、ウキペディアではXとなっている。

 

安倍晋三銃撃事件とは、2022年7月8日11時31分、奈良県奈良市近畿日本鉄道大和西大寺駅北口付近にて、元内閣総理大臣安倍晋三氏が選挙演説中に手製銃で銃撃され、死亡した事件である。本件は日本国外の報道機関などでは安倍晋三暗殺事件とも呼称される。 総理大臣経験者が殺害されるのは二・二六事件以来のことだそうだ。元首相が撃たれ、死亡した。その場で取り押さえられたのは41歳の男。男は手製の銃で背後から被害者を強襲したことになっている。犯行の動機として、「旧統一教会への恨みから教団との関係が深い安倍晋三を狙った」と主張した。

 

本書を読んで、新たな知見が幾つか得られた。元号改元が事件の背景にあると作者は述べている。それは、令和とは、日本を支配する他民族(朝鮮民族?)の指導者が、日本人を「掟」で縛り、「言いつけ」を下すという旨意を含んでいるので、一部の国粋主義者には許すことができない問題だということである。また令和元年が始まったのは5月1日であるが、この日は文鮮明によって1954年に創設された旧統一協会の創設記念日に当たるのだそうだ(そうなると、令和元年の始まりが5月1日であることは偶然だったのであろうか!)。また、安倍晋三氏は天皇継承についての皇室の意見を無視したため、皇室からも恨みを買っていたようだ(そのためか天皇、皇后、上皇国葬に参加していない)。

 

本書はフィクションと断り書きを入れて、なぜ執筆されなければならなかったのだろうか。

 

この事件では多くの疑問点が見逃されていたからである。銃撃現場が選挙演説のみならず警備に不向きで以前に打診のあった野党代表には断りを入れているのに、安倍晋三氏には許可した。その警備の人数が少なく、担当者の技術が未熟であった。致命傷となった銃弾が、現場から見つかっていない。元首相の体からは、容疑者が放ったのとは逆方向から撃たれた銃創が見つかった。別の犯人がエアライフルを使ったのではないかという推測がでている。銃弾が体内で消えている(特殊なアマルガム弾を使用したのではないか)。被疑者Xの手製銃で100メートル先の駐車場に弾痕ができるのか。銃創から推測するに、被疑者の位置からでは、入射角度が合わないので、別に暗殺者がいたのではないか。事件直後の複数の新聞の記事が一字一句同一の内容であった。「被疑者単独犯というシナリオありき」を伺わせる。そして、警察の現場検証は事件発生から5日後まで行われなかった。警察は何を隠しているのか? 真犯人は誰なのか?

 

作者は、「歴史は陰謀の積み重ねだ」と断言している。今回の事件は「五・一五事件」、「下山事件」、「赤報隊事件朝日新聞阪神支局襲撃事件)」、(真珠湾攻撃)、(ケンディ暗殺事件)、(米国同時多発テロ)と同じにおいがするとも述べている。

 

一人の男の恨みから生じた衆人環視の中で行われた暗殺事件と思っていたものが、とんでもない事実が裏に潜んでいることを知り、私は驚愕した。著者の書いた『下山事件 最後の証言』も読んでみよう。