Book Review 27-7ノンフィクション #二〇世紀最大の謀略
『二〇世紀最大の謀略』(落合信彦著)を読んでみた。著者の実兄は空手家で、本人も米国で空手を教えていたようだ。息子はメディアアーティスト/研究者の落合陽一。著者が落合陽一の父親と知り、本書を読んでみることにした。
国際情勢や諜報関係の事情をレポートした作品やそれらを題材とした小説、翻訳を得意としている。フィクション、ノンフィクション問わず世界を舞台にしたスケールの大きい話が多いらしいが、発言には信憑性に欠ける面もあるようだ。
本書は1977年に出版した『2036年の真実』に、新たに入手した情報を書き加えて1993年に出版されている。さらに2013年に、米国大統領ジョン・F・ケネディの暗殺の真相を追った情報を増補して文庫化したものである。2036年とは、米国政府により封印されている暗殺に関する多くの証拠物件が解禁される年だそうだ。
「正式」発表では、オズワルド単独犯行説となっているが、米国人は現在、誰一人としてこの説を信じていない。その矛盾を延々と述べているが、まさに矛盾だらけだ。重要証人16名が相次いで変死している。ダラスでのパレード・ルートが突然変更された不可解さを探る。「大統領を撃ち抜いた弾丸」の軌道が物理現象で説明できない。CIA、FBIにケネディに恨みを持つマフィア・コネクションが絡む。結局、ケネディ兄弟が軍産複合体・マフィアの利益を排除しようとした試みが、彼らの怒りを買った結果であった、ということか。
著者は、さらにリチャード・ニクソンが絡んでいることを強調している。本書を読むと、ケネディ暗殺の背景にある米国の巨大な闇が垣間見える。情報は100年間公開されないそうだが・・・。
ケネディ暗殺を参考に、伊坂幸太郎氏が『ゴールデンスランバー(黄金のうたた寝)』(ビートルズの曲You never give me your money.の一節からとっている。)を書いている。首相暗殺事件の濡れ衣を着せられた男の話。仙台で首相がラジコンからの爆薬投下で謀殺される。傷害事件を阻止して時のヒーローとなった宅配便の青年が、2年経過した時期に犯行直後に犯人としてテレビで大々的に取り上げられる。その逃走過程が語られる。体制に睨まれた男の最後はこんな結末が落としどころか、と意気消沈してしまう。
帝銀事件(1948年、帝国銀行支店で銀行員ら12人が毒物で殺害されたもので、画家の平沢氏が犯人として逮捕され、1955年死刑が確定した。 平沢氏は獄中から無罪を叫び続けたが認められなかった。元731部隊員が犯人として話題に挙がったが・・・)、下山事件(1949年、行方不明の国鉄総裁下山氏が轢死体となって発見された事件。国鉄職員の大量整理案を発表し、労働組合が反対闘争を盛り上げていた最中のため、労働運動に大きな打撃を与えた。陰で米国が絡んでいたのではないかと・・・)、袴田事件(一家4人の殺害、金品強奪、放火事件。従業員の袴田氏が犯人とされて死刑が確定したが、警察の証拠捏造の可能性が強い)にしてもそうだが、体制がシナリオを作った事件は、世間の誰一人として信用していなくても、結果は覆せないのだ。米国然り、日本然り。