Book Review 18-3 警察小説 #真珠湾の冬

真珠湾の冬』(ジェームズ・ケストレル著)を読んでみた。原題は Five Decembers (5度の12月)。本書は三部構成である。話は1941年11月から始まって第二次世界大戦終戦の1945年まで。

第一部は太平洋戦争が始まる11月末からのハワイが舞台である。戦争直前、二人の惨殺死体が見つかり、担当する陸軍あがりの警察官Mが現場へ。真珠湾隊司令の甥と日本人の娘が同時に惨殺されるというスキャンダラスな事件。犯人はだれか。そして動機は何か。第二部では犯人を追いかけ、香港へと降り立つ。犯人を追い詰めたMが逆に罠にはまり、敵国日本へ送られる。そこで惨殺された娘の関係者に救われ、穏やかな潜伏の日々が訪れる。そして第三部では終戦が訪れ、ハワイへと帰還した主人公と犯人の最後の対決。

本書はスケールが大きい。ハワイを舞台にした捜査がアジア、戦時中の日本へ、そしてまたハワイに移動する。背景として、真珠湾攻撃や日米開戦の情報戦の詳細が描かれている(これでも出版にあたり6万語が削られたという)。Mとハワイの恋人との関係、日本語を教わる日本人女性との微妙な関係もどうなってゆくのか知りたくなる(日本での隠遁の経緯や東京大空襲がその関係に大きな影を落とす)。東京大空襲という歴史的背景を背負いながらの日常の描写がなされる。米国人が東京大空襲を描いた作品は少ないのではないか。本書は、歴史書には記載されない銃後の人々に残した爪痕の大きさを想像させる。

 事件解決後、Mはどう行動するのか。そこを読んで私は胸を撫でおろし本を閉じた