Book Review 9-16医療 #ドーパミン中毒

 

ドーパミン中毒』(アンナ・レンブケ著)を読んでみた。

著者は精神科医で、依存症医学の第一人者である。脳は快楽と苦痛を同じ場所で処理するのだそうだ。それゆえ、本書は、快楽と苦痛の本といえよう。幾つか事例を取り上げているがここでは割愛する。

 

ドーパミンは1957年に人間の脳内伝達物質として発見された。「欲しい」に関係する。快楽と苦痛はシーソーのように働く。「いいことがあれば必ず悪いことがやってくる」ということになる。ドーパミン物質は「耐性」を引き起こす。一定量の摂取では前より少ない快楽しか得られないのだ。そのため、苦痛のシーソーを苦痛の側に偏らせる。

ギャンブル中毒であるが、引き金は大金を得たいということよりも、ギャンブルに向かう動機は報酬の予測にあるという(当たるまたは外れるという予測にあり、どちらもドーパミンが増加する)。また、快楽の後にやってくる苦痛は当の快楽よりも長続きし強烈である。

 

 薬物中毒は、死因の大きな比重を占める。世界的な死亡リスクは、1)高血圧(13%)、2)喫煙(9%)、3)高血糖(6%)、4)運動不足(6%)、5)肥満(5%)ということであるが、依存症は死因の1.5%を占めており、両親より早くなくなる原因のトップ3が、薬物の過剰摂取、アルコールによる肝臓病、自殺となっている。

近年、ドラッグへのアクセスのしやすさがあり、抗うつ剤、興奮剤、ベンゾジアゼピン使用が増加している。また、暇な時間が依存症を増やしているようだ。

 著者は、多くの中毒患者を治療しており、その際に用いる面接法を紹介している。

医療面接の方法:DOPAMINEと覚えるとよい。

D:data (接種の仕方)

O:objectives(吸うとどうなるのか)

P:problems(何か悪いことはあるか)

A:abstinence(何かを断つこと・節制)

M:mindfulness(心に準備をしてほしい)

I:insight(洞察)

N:next steps(次の段階)

E:experiment(実験)

様々な制御を行うこと(セルフ・バインディング)は中毒からの脱却に一役買うようだ。

苦痛も中毒になるという。苦痛が快楽につながるのは体内のホメオスターシス調整機構を作動させるためだそうだ。「ワーカホリック」も中毒である。「フロー(ゾーンに入る)」に嵌るから。

 

薬物に頼らない脱却法として、運動が推奨される。運動は気分をポジチィブにする物質を増加させる。また良い人間関係を構築することが勧められる。親密さはそれ自体がドーパミン源となる。幸せを感じるとホルモンであるオキシトシンが分泌されて、ドーパミンを増やすからである。

 

アルコール依存者の自助グループ(A・A)の主な効果は「脱・恥の効果」である。自分の弱さを曝け出せる安全な場所として参加者には捉えられている。正直に自己点検してゆくと、自分自身の欠点が理解できるようになる。

 

薬物中毒者にならないためには、不完全を不完全と認めること、嘘をつかないこと、自分を人生の責任者とすること、のようである。