Book Review 15-15 時代小説 # 涅槃の雪

 

『# 涅槃の雪』(西条奈加著)を読んでみた。著者は1964年北海道生まれ。 2005年『金春屋ゴメス』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2012年、本書で中山義秀文学賞、2015年『まるまるの毬』で吉川英治文学新人賞

 

本書は天保年間に行われた天保の改革に纏わる話。天保の改革とは何だったろうか。これは江戸時代の天保年間に行われた幕政や諸藩の改革の総称だそうだ。江戸時代の三大改革の一つ(他に享保の改革寛政の改革)。

 

天保年間とはどのような時代であったのか。徳川家斉と家慶の時代で、老中首座に水野忠邦を据えた(老中になるために肥前国唐津藩主から石高の低い遠江国浜松藩主に配置換えを自ら望んだ)。この時代は天災に見舞われることが多く、全国的に凶作(大飢饉)になり、米価・物価が高騰する。そこで経済を再生させようと様々な政策を打ち出したのが水野忠邦である。本書はそれぞれの政策の庶民への影響を各章に分けて、記述している。

 

天保年間にその結果何が起こったのか。農村では百姓一揆、都市部では打ち壊しが起こる。大坂では大塩平八郎の乱。海外ではアヘン戦争(清と英国間でのアヘンの扱いを巡る戦争)や沿岸ではモリソン号事件(米国商船「モリソン号」を日本の砲台が砲撃した事件)。このような問題解決策として、農村復興を目的とした人返し令や奢侈禁止令(寄席や女浄瑠璃の取り締まり)、芝居町所替え(歌舞伎の芝居小屋を郊外の浅草に所替え)、貨幣鋳造(金の含有率を減らして幕府が儲け、物価は上昇)、株仲間解散令、隠売女の取り締まり等が行われた。

 

本書では、天保の改革の最中に、苦しむ江戸庶民の問題を解決すべく北町奉行遠山景元と吟味方与力・高安門佑を主人公にして活躍する話が展開する。天保の改革が発布され、江戸庶民の娯楽は奪われてゆく。彼らは南町奉行矢部定謙(水野が指名したのに)とともに、改革を主導する水野忠邦と対立を鮮明にする。高安はある事件をきっかけに、奉行の命令でお卯乃という元女郎と同居することになった。そんな中、出戻りの姉が同居してきてワンマンに家を切り盛りしてゆく。

その後も水野忠邦は冷酷非情と恐れられる目付・鳥居耀蔵を指名し、江戸庶民を苦しめる。 江戸庶民は禁令にどう立ち向かうのか。

 

後半、高安とお卯乃は心を通わせるが、お家存続のために親戚中から高安に結婚の話が持ち込まれ、姉も突然嫁入りし、お卯乃は消息を絶ち、格のつりあった家から嫁を迎える話しが進捗する。高安とお卯乃の結婚を期待していた読者がチョットがっかりしたところで、最後どんでん返しで締めくくることになる(姉の深謀遠慮が判明)。読後感よし。

 

いつの時代でも上からの改革(?)には庶民の犠牲が付きまとっていることがよくわかる。