2022-11-20から1日間の記事一覧

Essay 9 患者の論理・医師の論理 事例 44歳女性。「貧血」なので貯蔵鉄の検査をしてほしいとのことで来診。若い頃から赤血球の比重不足で献血ができなかった。5年前、月1回の頻度で3ヶ月間に38度台の発熱や手指の関節痛が出現したためAクリニックを受診…

Essay 8 家庭医を目指す君達へ(私の研修時代) 産婦人科研修中,私に分娩を任され,会陰切開縫合をした妊婦さんが足の痛みを訴え続けたことがあった.精神的に問題のある方かと思って対応していたら,そのうちに足が腫れ上がってきた.指導医が再縫合して事…

Essay 7 患者中心の医療 社会のおびただしい変化が患者・医師関係に影響を与えている。医療の世界でも消費者主義が台頭し、病院でのキュアから地域でのケアへの移行、患者の自律性やインフォームド・コンセントの重視、医療職の社会的地位の低下、等々がみら…

Episode 3 研修医時代 患者の命をつなぐ往診 2年前から寝たきりとなり定期往診されていた83歳女性を前任者から引継ぎ、段々畑の間の坂道を往診鞄を下げて通った。寝たままの患者を運び出すには多大な労力が必要であったため、少々の病状変化では在宅でするし…

Episode 2 研修医時代 空の輝きの一部は家々の灯りである 私が医師6年目に赴任した人口6000人の山間の町は南北に長く,北の3村と南の1町が合併して町を形作っていた.北から天竜川が流れ町の途中から一方は浜松へ,もう一方は豊橋へと分かれていた.赴任し…

Episode 1 研修医時代 男の条件 □男の条件 この町(静岡、愛知、長野の県境に立地)で男が尊敬されるためには3つことができなければならなかった.春は鮎釣り,夏はソフトボール,冬は駅伝が盛んであった.したがって,男の条件は自ずと長距離が速いか,鮎…

Essay 6 どうして今、患者中心でなければならないのか 総合診療科で診療に当たっていると様々な患者に出会う。例えば、70歳の女性の場合はこんなふうであった。それまで何の症状もなく元気で山歩きをしていたが、たまたま健康診断を受けたところ、未破裂脳動…

Essay 5 NBM:Narrative-based Medicine 現代の生物学的医学は,科学的であることのみに主眼をおき、患者自身,あるいは患者の生きた体験や抱える信念を無視する傾向を近年ますます強めている。その反省としてEBMという、科学性のみならず患者の背景をも考慮…

Essay 4 EBM: Evidence-Based Medicine Sackettら1)は機械論を基本としたこれまでの「科学的」アプローチが臨床実践にそぐわないと批判的に総括し、これを変えるための新しい実践法EBMを提唱した。「優れた医師は、自分自身で培った専門的知識・技能ととも…

Interview 1 北の大地で勝負を挑む」 北海道立札幌医科大学に1999年「地域医療総合医学講座」ができた。 ―― 設置の目的は、「地域医療への貢献」をより積極的に果たすため、1)系統的・総合的な卒前及び卒後教育を通じて地域医療のできる医師または研究者を…

Essay 3 医師と患者の関係 最近、森林学の大学院生と話す機会があった。「木をみて、森をみない」という言葉があるが、まさに字のごとく、森全体についての総合的な知識・技能をもった者が、森林学の専門家集団の中でさえ非常に少ないということを嘆いていた…

Essay 2 EBM &NBM EBM: Evidence-Based Medicine NBM: Narrative-based Medicine 近代医学は近代合理主義科学に基づいている.その機械的世界感は,世界がいかに複雑に見えようとも,結局はひとつの巨大な機械であり,何かを認識するためには,その対象を要…

Book Review 14-1 数学 世界はeでできている 『世界はeでできている』(金 重明著)を読んでみた。 著者は数学者ではないようだ。『算学武芸帳』(朝日新聞社)、『抗蒙の丘―三別抄耽羅戦記』(新人物往来社)、『13歳の娘に語るガロアの数学』、『やじうま入試…