Lecture 2-4 科学性と人間性 若者へのメッセージ

大きな食卓の上にたくさんのご馳走が並んでいるが、1メートルもある長い箸が人々の右手にくくりつけられている。この状況は天国も地獄も同じである。天国の人たちは笑顔で、地獄の人たちは苛ついている。その違いはどこから来るのか。他者を押しのけ自力に賭けるものと協力と連帯に期待するものとの違いであろうか。

フランス出身の社会学者、文化人類学者であるマルセル・モースは、「贈与論」の中で贈与によって社会制度を活性化させる方法を論じている。「贈与を受けたと思いなす」ことが重要である、と。「価値あるものをもらったと思ったら、返礼をしなければならない」ということがすべての人間社会の根幹になっているということである。医師は自分の力だけで医師免許証を勝ち取ったのではないのである。家族・友人・国民からの支援を忘れてはならない。

Negative capability(詩人John Keatsの言葉):恵まれぬ環境を耐え抜くことが大事である。人は誰しも不遇の時がある。気持ちも沈むこともあるかもしれないが、重圧に耐えてやり終えたときには満足のいく結果が得られると思う。諸君にはこのような精神を持って頑張って欲しい。