Book Review 15-2歴史小説 # 友よ

『友よ』(赤神諒著)を読んでみた。

著者は『大友二階崩れ』、『大友の聖将』、『大友落月記』で、西の大国・大友氏の国を揺るがすお家騒動の中で、「義」を愚直なまでに貫こうとした家臣の行動を描いて感動を呼んだ。

 

本書は戦国時代の敗者が主人公。島津家を相手にした戸次川の戦いで命を落とす22歳の若武者長宗我部信親。

前半は、出会う者たちを信頼し「友」とした尊重する長宗我部信親の姿を描く。

後半は、生き続けることだけを願う無能な武将千石秀久と武勇の誉れ高く人望も厚い長宗我部信親とを対比しながら、物語は進んでゆく。

史実は、一人の武将が「無駄死に」と思える戦いに臨むことで、秀吉から土佐一国を安堵されたということだろうが、そこに信頼や愛情を盛り込んで読者をひきつけるのは、優れた才能があるからだろう。