Book Review 20-1 ミステリー # ミスティック・リバー

ミスティック・リバー』(デニス・ルヘイン著)を読んでみた。2001年出版。

帯の文句がすごい。「この一冊がミステリを変えた」「もうルヘインなしでは生きられない(S.キング)」「必読の一冊。なんと素晴らしい(E.レナード)」

これは読むしかないでしょう。

題名はマサチューセッツ州を流れる実在の川である。

「少年期のトラウマ」「運命の分岐点」「因果は巡る」から構成されている。

ボストンの小さな町で育った3人の主人公(A,B,C)。少年時代にそのうちの一人Aが偽警官に拉致(性的虐待)される。4日目に自力で脱出。少年を連れ去った犯人は逮捕され事件は終息した。

25年後、大人になったAは結婚し男児の父親になっていた。Bは18歳の時に結婚した妻との間に娘Dが産まれたが、妻と死別。その後、再婚し2人の娘を授かる。Bは過去に犯罪を重ね刑務所にいたこともあったが、娘が産まれて以降は犯罪から足を洗い、雑貨店の店主として暮らしていた。Cは州警察刑事になっており、殺人課に配属され、相棒と共に、日夜捜査にあたっていた。Cは結婚したが、喧嘩をしたことで妻は家を出ていた。

ある日、Bの愛娘Dが遺体となって発見され、殺人課の刑事となっていたCがその事件の担当となる。調査の結果、娘Dは駆け落ちを企てていたことが判明。Dの死亡推定時刻の深夜にAが血まみれで帰宅し、ある男に暴行を加えたと妻に告白する。一体、Dを殺害した犯人は誰なのか?一方、別の場所で血痕が見つかり、死体のない殺人が行われた可能性がでてきた。関係者それぞれに交錯する嘘や疑いが、事件を思わぬ方向へと発展させてしまう。

読者はAの告白(別の殺人)は真実なのか、それは偽りでAが娘Dを殺した犯人ではないのか。そんな疑問を持ちながら読者はページをめくってゆく。

この小説は、2003年にクリント・イーストウッドが監督をして、『ミスティック・リバー』(Mystic River)として制作されている。ショーン・ペンが主演男優賞、ティム・ロビンス(『ショウーシャンクの空に』で主演、必見の名作)が助演男優賞それぞれ獲得した。早速、making付きのDVDを買って(中古で94円)鑑賞することにした(2023年1月12日鑑賞)。

Making DVDによると、撮影はすべてボストンで行われ、出演者は全員ボストン訛りで話しているそうだ。イーストウッド監督の配慮で、殺害やレイプ場面は映像化されることなく、視聴者や少年役者への負担を減らしている。

観終わって浮かんだキー・ワードは「川」「PTSD」「もう一人の少年」「毎月届く500ドル」「因果応報」「避けられない運命(ギリシャ悲劇の一つオイディプス王を思い浮かべる)」。原作が忠実に映像化されているので、時間のない者は映画観賞でも堪能できよう。