Book Review 12-4 スポーツ #女性ボディ・ビル

 

『#我が友、スミス』(石田夏穂著)を読んでみた。著者は1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。本書は第166回芥川賞候補作にも選ばれた。著者もボディ・ビル・ジム通いをしている。

 

筋トレにはまり、ボディ・ビル大会出場を目指す女性を描いた作品。ジムに入会して約1年の20代女性会社員U野が、筋トレに嵌り、女性ボディ・ビル大会出場のためのトレーニングをパーソナルトレーナースペシャルコーチとのやり取りを交えて描く。大会に望む準備の過程が非常に面白い。そこ過程をぐいぐい読ませてゆく。

 減量、脱毛やピアスの穴あけ、ビキニ選びやハイヒールで歩く特訓、ポージングレッスンの描写もあるのだ。 

 女性がムキムキすぎるのは変か。この小説に、今のフェミニズムルッキズムの視点を感じさせる、という。

タイトルにある「スミス」とは、スミスマシンのことである。動作の軌道が固定されているため、安全にトレーニングが行え、特定の対象筋を独立して刺激を与えることができる点に特徴があるそうだ。ただ、直線のレールに沿ってバーが上下するため、弧を描くような軌道の種目ではそれが欠点になる場合もある。

同じ著者の『ケチる貴方』、『黄金比の縁』も読んでみたが、いずれも面白い。最新刊『我が手の太陽』も読んでみた。熟達した溶接工の悩みや葛藤、仕事に対する矜持が描かれている。現場に出て実際に従事してみないとわからないような詳細が描写されている。どの作品も主人公たちのこだわりがユニークで、次の展開を求めてページを捲ってしまう。文系ではなく、理系の女性の書いた病みつきになる本である。