『右目でウインクができない』
ときに体の片側だけに異変が起こると訴える患者さんに出会う。
そんな思い込みもあるのかとこれまでは聞き流していた。
私の場合はどうであろう。
大学入学3日前に、右手の舟状骨を折って、3か月ギブスを巻いた。
30年前、右肩が40肩になり、しばらく杖をついて歩いた。
10年前、歩くと右鼠径部に塊が出現し、ヘルニアの手術を受けた。
5年前、高い窓の掃除をするように妻に言われて脚立から落下し、右肩鍵盤断裂になり、未だに治らない。
その数か月後、雪道を急いでバスに乗ろうとして右足を骨折し、手術を受けた。
1年前から、白内障術後の右目の眼圧が高く、緑内障の目薬を差している。
2023年9月21日夕刻、右眼瞼が閉じない。右口角が挙がらない。右口唇から食べたものが零れる。右顔面神経麻痺である。ベル麻痺としてプレドニンを30㎎/日で開始することになった。
耳鼻科付きのナースに「右目でウインクができない」と囁いたら、待合室の隣に座る男性がクスッと笑った。