Movie Review 5 #ペガサス スマホに潜むスパイ

2023年6月12,13日、NHKBSで放送された『#ペガサス スマホに潜むスパイ』を観た。前編、後編と2回に分けて放映された。フランスと米国の共同制作 2023年度作品。

今や財布を失くすよりもスマホを失くした方がショックは大きいと言われ、誰もが手元から離せなくなっているスマホ。お金がなくて家賃を滞納しているのに、スマホの通信費だけは払っているという患者さんがいるとケア・マネジャーが嘆く。

そのスマホに「ペガサス」というスパイウェアが組み込まれると、スマホ内のすべての情報が抜き取られるという。イスラエルNSOグループ社が開発した「ペガサス」はテロや犯罪を阻止するという名目で、国家単位で諜報機関などが利用するスパイウェアである。販売にはイスラエル国家の承認がいるという。世界中のジャーナリストや人権擁護活動家など国家の陰謀を暴く等、独裁国家が敵視したくなるような人物の電話番号が5万件ハッキングされたという情報をもとに、国際ジャーナリスト集団が真相を明らかにするため共同歩調をとる。フランスのマクロン大統領の端末からも「ペガサス」が検出された。2018年にムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこの「ペガサス」で位置情報を得て、トルコでサウジアラビア人の反体制派記者を殺害させたと考えられている。メキシコで2022年に、年間13人のジャーナリストが麻薬マフィアの手で殺害されたとしている(その一部で「ペガサス」が悪用された証拠がある)。このような情報の真偽を確かめるためには極めて困難を伴う。流出した番号リストをもとに記者たちが被害者を特定し、そのスマホが乗っ取られているかどうかを本人の許可を得て確定しなければならない。そのような実態を世界中に公開するまでを追う。

後編では、「スパイウェア・ペガサス」のハッキング状況を各国のジャーナリストが共同して世界で一斉に報道するプロセスを映し出す。ジャーナリストたちは動揺を隠せないが、身の危険を賭ける覚悟で臨んでいる。2021年夏、各国メディアが「ペガサス」の実態を暴く記事を同時発表すると、世界に激震が走った。公開の場で「サウジアラビア政府が拘束または殺害を承認したとする調査報告書を公表したが、サウジアラビア政府は「否定的で事実と異なり、容認できない」と反発している。一方、開発者のNSOグループは「不正な利用を把握していない」という主張を続け、議論は嚙み合わない。この情報公開後、開発者のNSOグループは衰退の一途を辿っているというのだが・・・。

今やジョージ・オーウェルが予告した『1984年』を遥かに凌駕するディストピア(監視社会)がわが身に迫っているのだ。あなたは監視網から逃れるためにスマホを手放すことができるか。