Book Review 15-12 時代小説 # 両京十五日

 

『# 両京十五日』(馬柏庸著)を読んでみた。

著者は中華人民共和国の小説家。本名は馬力。満族。代表作に小説『長安十二時辰』。

ハヤカワミステリの記念号2000冊目。出版社も力を入れている。

1425年隆盛極める明王朝の皇帝が、首都北京から南京へ遷都を図って皇太子(後の第4代皇帝洪煕帝)を送り出すところから物語は始まる。歴史上は空白の十五日間(何も記述のない)を作者の想像力で補った話らしい。南京に到着早々、皇太子の乗る船が爆破されるがからくも逃れる(皇太子は船上でコウロギを追っかけていて爆心地から遠ざかっていたため難を逃れる話の持って行き方がうまい)。その後、彼の命を何者かがつけ狙いはじめる。この襲撃の黒幕は、朝廷内の裏切り者かはたまた宗教結社・白蓮教徒が仕組んだ罠なのか。さらに北京から皇帝が危篤との緊急連絡が届き、意を決した皇太子は窮地で出会った3人、すなわち捕吏、官僚、女医(男装)、四名で長江の流れに沿って南京から北京を目指す。敵が事を決する日までわずか15日間しかない。2つの都の間に待ち受ける罠と刺客を避けながら、北京を目指す旅が始まる。

 北京に着いたところで、新たな展開が待ち受けている。

殉葬 (じゅんそう)といって、王侯貴族など主人の墓に,その供として妃妾や従者が同時に葬る風習が物語の展開に大きな影響を与えていることがわかる。

たくさんの中国人の名前が出てきて(たくさんの漢字)話に就いてゆくのが大変であるが、時間に余裕のある者にはミステリー脳を鍛えるのにはうってつけかも知れない。