Book Review 24-9歴史 #天災から日本史を読みなおす

 

『#天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』(磯田道史著)を読んでみた。著者は、慶應義塾大学文学部卒業。現在、国際日本文化研究センター教授。作品に 武士の家計簿加賀藩御算用者」の幕末維新』等がある。研究は近世中後期の幕藩政改革、忍者の古文書の調査、感染症の日本史。東日本震災後は、歴史地震津波の史料を調べ解読し防災に役立てる試みをしている。

 

著者が天災の古文書に興味を持つに至ったのは、母親が徳島で津波被害に遭遇していることが契機になっているようだ。津波に対する教訓は、少しでも高いところへ避難すること、赤ちゃんを抱っこする紐を枕許に用意すること、5歳児を助けることが一番難しい(抱くには重く、一人では行動できない)ので一度親子で避難訓練をすること、一度逃げたら引き返してはいけない、井戸水が枯れたら津波が来ると心得よ、一度は避難場所を確認すること、等。

東日本大震災の教訓は、古文書に学ぶこと(津波被害地に住宅を建てない)、松林は津波に弱い、一人一人がてんでに逃げること、マニュアルよりも直観を信じること、高台へ一刻も早く非難すること、消防士は「一に避難、二に救助」。

天災が後の歴史を動かしている事例がたくさん挙がっている。豊臣政権を揺るがした二度の大地震(伏見地震により徳川家康を滅ぼす機会を逃し、豊臣政権が滅んだ)、1707年の宝永地震が招いた富士山噴火、佐賀藩を「軍事大国」に変えた台風、等。

 

天災については、環境考古学や気象学、自然地理学などの専門家が地層や現場の発掘調査などを交えて考察した書籍の方がよいという意見も散見されるが(数百年の間に津波地震被害にあった記録のある地区に原発が、科学的に問題なしとして建設され稼働しているが)、本書を読むと、専門家のいうエビデンスに加えて歴史から多くのことを学ぶび、両者を勘案して判断を下すべきであると思えて来る。