Book Review 15-10 時代小説 # チンギス紀

 

『# チンギス紀』(北方謙三著)を読んでみた。

著者は、日本を舞台にした推理小説歴史小説を書いた後、中国を舞台にした『楊家将』、『水滸伝』(全19巻)、『楊令伝』(全15巻)、『三国志』(全13巻)、『史記 武帝紀』(全7巻)などの著書を多数執筆。多くの文学賞を受賞している。

12世紀に活躍したテムジン(のちのチンギス・カン)の活躍を描いている。大小様々な集団に分かれてお互いに抗争していたモンゴルの遊牧民諸部族を一代で統一し、広大な地域におよぶ国々を次々に征服し、最終的には当時の世界人口の半数以上を統治するに到る人類史上最大規模のモンゴル帝国の基盤を築き上げた。本書は、テムジン10歳のときから晩年に至るまでの戦いの記録である。発音することも覚えることも困難な膨大な人物名が登場する。それを、巻頭の姓名表を参照しながら読むことになる。チンギス・カンが1218年にナイマンを滅ぼし、ホラズム・シャー朝に遠征を行い滅ぼした。それを17冊、半年ごとに読んだのでなかなか物語の流れが掴めにくかった。話は時系列でハラハラドキドキすることは少なく淡々と進んでゆく。今は全巻発刊されたので、続けて読むとわかりやすいかもしれない。

 著者の歴史作品は十数巻に及ぶものが多い。なぜ著者が晩年にチンギス・カンの生涯を描いたのか、私には今ひとつわからなかった。『水滸伝』は、著者独自の視点で、既存の作品と一線を画しているようであったが・・・。

 

それに関連して2024年2月にNHK BSで放送された『敦煌』(佐藤純彌監督、1988年)を観た。敦煌は、西域への出入口で仏教が早くから伝来し、多数の石窟寺院が現存しており、その石室の一つから、唐時代の古文書(敦煌文書)や西夏文字で書かれた仏典が20世紀に多数発見された。それをもとに井上靖氏(沼津中学在籍、京都大学卒業後、毎日新聞社に入社。芥川賞を受賞。文化勲章を受章。)が執筆した作品を映画化したものである。これだけの情報から、敦煌について調べ上げて作品にした努力と才能には驚嘆する。さすがノーベル文学賞候補となっただけのことはある。

映画では砂漠の中での戦闘シーンが多いが、北方氏のチンギス紀で描写される戦闘シーンはこれを観るとイメージされるかもしれない。小説「敦煌」に出て来る趙・朱・尉遅の三人は架空の人物のようだ。

物語は、官吏任用試験に失敗した漢人が町で、西夏の女が売りに出されているのを救う。その時彼女はお礼に一枚の小さな布切れを与えたのだが、そこに記された異様な形の文字(西夏文字)は主人公の運命を変えることになる・・・。映画ではシルクロード周辺の各部族の争いが活写される。・・・西夏との戦いによって敦煌が滅びる時に洞窟に隠された万巻の経典が、二十世紀になってはじめて陽の目を見たという史実をもとに描く壮大な歴史ロマンとなっている。人物よりも「敦煌」という町自体を主人公とした物語である。