Book Review 30-7 マンガ #プリニウス

『#プリニウス』(ヤマザキマリ×とり・みき著)を読んでみた。

ヤマザキ マリ氏は漫画家、随筆家、画家。東京造形大学客員教授。イタリア在住。とり・みき氏は漫画家。

プリニウスについては ローマ帝国初期に活躍した博物学者であることしか知らなかった。奇想天外な『博物誌』102巻を完成させたが、現存するのは37巻のみである。日本人の澁澤龍彦氏(人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを数多く発表)が関心を示し、紹介する文章を書いているが、私が読んでもピンとこなかった。そんなとき、『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリ氏ととり・みき氏で、プリニウスのマンガを10年にわたって連載したことを知った。マンガであり、全12巻あるので札幌市立図書館では所蔵していなかったが、なんと厚岸町の情報館から借りることができた。構想と作画をヤマザキマリ氏が、とり・みき氏が背景や妖怪を担当したようだ。
 物語の主役は、プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス[A.D.23~79年])ということになっているが、途中からローマ皇帝ネロが主役の地位を奪っている。
 話は火山の噴火や雷といった自然現象へのプリニウス一行の遭遇から始まる。長い旅の後、ローマでは皇帝ネロとの緊張関係が待ち構えている。ローマは美しいというより魔窟のような場所。人心は荒廃し、新興宗教キリスト教の影も忍び寄る。一方、プリニウスの書記官エウクレスの想いを寄せた美少女娼婦への行動が物語に彩を添える。(プリニウス自身に関する歴史的な記録は少なく、そのためマンガの筋はヤマザキマリ氏が創作しているようだ。偶に妖怪なども出て来るが、読者の博物学的知識が増える可能性は少ない)。ローマを離れてから再度大地震に遭遇する。この辺は2011年の東日本大震災の惨状を意識しているのかもしれない。建物の崩壊や水道などのインフラの壊滅状態、ポンペイの街は大混乱の描写はマンガだからこそより伝わる。その後、未開の大地・アフリカへの旅を決意し、船旅に出る。しかし、嵐に遭遇。何とかアフリカに上陸した。

その後、皇帝ネロの荒んだ生活が中心に描かれる。哲人セネカも登場。ローマの大火災。ネロ暗殺計画も勃発する。ギリシアの地で妄想に取り憑かれる皇帝ネロ。・・・元老院から「公共の敵」として認定されたネロはついに終幕を迎える。

最後の2章は若き日のプリニウスを描く(動物や昆虫、植物と触れ合い、世界を観察する悦びに目覚める)。 

各巻末の著者たちの対談で制作の意図や苦労話が掲載されており、大変参考になる。この機会にヤマザキマリ氏の著作『貧乏ピッザ』、『扉の向こう側』を読んだが、若くしてイアリアに飛び出していった行動力や彼女の才能、母親の教育法に感銘を受けた。鉄は熱いうちに打て(Strike while the iron is hot)。