Book Review 15-12 時代小説 # 沙羅沙羅越え

 

『# 沙羅沙羅越え』(風野 真知雄著)を読んでみた(大活字本で)。著者は1992年「黒牛と妖怪」で歴史文学賞受賞しデビュー。2015年「耳袋秘帖」シリーズで第4回歴史時代作家クラブ賞・シリーズ賞、本書で第21回中山義秀文学賞を受賞。

 

佐々 成政という戦国武将をご存じだろうか(私は本書を読むまで知らなかった)。戦国時代から安土桃山時代にかけての武将・大名である。

戦国時代末期、越中佐々成政は、かつては織田信長傘下で秀吉の先輩格にあった。信長死後に変貌し天下取り寸前の秀吉を嫌悪していた(この頃前田利家は秀吉傘下に下っていた)。秀吉の天下取りの野望により、成政はまさに秀吉に攻め滅ぼされようとしていた。八方ふさがりの中、成政は、秀吉の野望を挫くため、徹底抗戦を決意する。そのために前田利家に気づかれる事なく、家康に頼る以外にないと考えた。刻々と窮地に追い込まれたこの時期、敵地を避けて家康に会うには、厳冬期の飛騨山脈を越える必要があった。そこで家臣たちにも内緒で木こりや農民でさえ試みることをしない厳冬期の立山を越えに挑む。風雪に阻まれた沙羅沙羅峠越えは死と隣り合わせの行軍だった(まさに山岳小説でもある)。その中で、隠密の諜報活動や愛妾との悲恋も語られる。

果たして、成政は家康を仲間に引き入れることができるのか。

 

結果よりも、生きざまが大事だと思わせてくれる清々しい小説である。