Book Review 15-3時代小説 # 幸村を討て

 

『幸村を討て』(今村翔吾著)を読んでみた。著者は『塞王の楯』で2022年に直木賞を受賞した。

以前に『真田太平記』で真田一族については書評をしている。真田昌幸、長男の源三郎信幸、次男の源二郎信繁(幸村)を中心にした長編物語である(長男が三郎で、次男が二郎に注目)。

本書は、大坂冬の陣、夏の陣を中心に据えて幸村の真田丸での活躍、幸村討死、大坂落城が描かれる。物語は、関ケ原の戦い時代に行ったり来たりしながら、最終章の真田信之徳川幕府の対決になだれ込んでゆく。途中に、大坂冬の陣、夏の陣に関わった織田有楽斎、南条元忠、後藤又米兵衛、伊達政宗毛利勝永のエピソードがそれぞれ章として挿入されている。

読んでいる最中は、途中の挿話が冗長に思えてくるが、最後の真田信之と家康のお家取り潰しを賭けた対決場面にそれらが生かされてくる。ここで本書のタイトルは『幸村を討て』でなければならないのだ、と気づく。真田信之はこの対決をどうやって凌ぐのか。父と弟と信之とが一体となって練り上げた策略は成功するのか。結論は知っていても、ページを捲る手が止まらない。