Book Review 15-8 時代小説 # チャンバラ

 

『# チャンバラ』(佐藤賢一著)を読んでみた。「王妃の離婚」で直木賞、「ナポレオン」で司馬遼太郎賞を受賞。

宮本武蔵といえば吉川英治となる(1935年~39年まで朝日新聞に連載された)。関ケ原の戦い(父とともに東軍として九州で参戦していた可能性が高い)や父親新免無二についての記述に間違えが指摘されているが、宮本武蔵といえば吉川英治が形作った像が世間では認知されている。

漫画では、井上雄彦氏が吉川英治の小説を原作として斬新な「宮本武蔵」像を描いている。手塚治虫文化賞マンガ大賞等を受賞している。

今回、佐藤氏が新しい武蔵像形成に挑戦した。

吉岡一門108名を相手にした激闘の描写はまさにチャンバラである(手に汗握る)。武蔵一人で108名をなぎ倒す様子を、死者を数えながら描写されている。

二刀流の達人である父親との葛藤・対決も見ものである。

佐々木小次郎との巌流島の対決になぜ遅れたのか。刀ではなく櫂を削った木刀で決闘に臨んだのか。納得のゆく説明がなされている。思いを寄せる女性とその息子の登場も興味深い。

フランスの歴史小説を書いていた著者が新たに挑んだのは日本の剣豪。夜を徹して読みたくなる小説に仕上がっている。