Book Review 18-5 警察小説 #悪逆

『#悪逆』(黒川博行著)を読んでみた。最新作である。

 

著者の黒川 博行氏は小説家・推理作家。大阪府在住。京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。妻は日本画家。『キャッツアイころがった』でサントリーミステリー大賞を受賞、『破門』で直木賞を受賞。

著者の作品は兎に角面白い。警察小説が多いが、美術品詐欺作品もある(美大卒で美術教師も経験したためか)。大体が警察官2名で捜査に当たる場面が多く描写される。その時の大阪弁の掛け合いとハードボイルドな男の世界を描いているところがユニークである。ただ、本作はこれまでの作品よりもユーモア溢れる会話がやや少ない気がする(ネタが尽きてきたのか)。朝昼夕と二人でいろいろな料理屋を渡り歩いて、様々な料理を注文する。それが美味しそうでつい食べたくなってしまう(関西に住んでいたら、その料理屋が実在するかどうかはともかく探して食べに行きたくなる)。また現在どのようなタイプの犯罪があるのか楽しみながら知ることができる(犯罪者と警察の両者の立場から)。

 

 さて、タイトルの悪逆とは、一つの犯罪ではなく、いくつかの犯罪をまとめた分類名であるそうだ。父母など目上の親族に対する殺人や暴行のうち重大なものを含み、日本では八虐の4番目の重大犯罪とされた。

 

本書は、過払い金マフィア、マルチの親玉、カルトの宗務総長が次々と殺害される(現在の3大悪逆か)。大阪府警捜査一課の刑事と所轄のベテラン部屋長が凶悪な知能犯による強盗殺人を追うという王道の警察小説である。さらには戦時中に麻薬密売組織に関わる話も出て来る。警察捜査の内幕を描きながら、裏社会の犯罪者たちを圧倒的な存在感で描き切るクライム・サスペンスである。

時間を忘れて読書に没頭できる(本書は約600頁)。ほとんどの作品を読んでしまっているので未読の読者が羨ましい。