Book Review 15-7 時代小説 # 秘太刀馬の骨

 

藤沢周平の時代小説がいくつか大活字本になっている。『秘太刀馬の骨』もそのうちの一つ。早速借りて読んでみた。

 

はじめに長男の病死以来、気鬱の病にとらわれた妻が主人公を悩ませる場面が描かれる。家庭に問題を抱えているところにちょっと違和感がある。

物語は、海坂藩の筆頭家老暗殺に用いられた幻の剣が「馬の骨」だということを派閥の長から呼び出されて主人公に告げられる。下手人不明のまま六年、闇に埋もれた秘太刀探索を甥と共に下命され、状況から秘太刀を伝授されたと思われる高弟5人に的を絞る。その高弟たちと立合うことで白黒をつけようと甥が難癖をつけて木刀勝負で挑みかかる。嫌がる相手に無理難題を仕掛けてのやり取りと勝負する場面が時と所を変えてそれぞれ描かれ、必ずしも主人公たちが勝つわけではないので、結果がどうなるか興味を持たせる。

やがて秘太刀の裏に例にもれず熾烈な執政をめぐる暗闘がみえてくる。

秘太刀(暴れ馬の首筋を切るという技)とは何なのかということがはっきりと書かれていない。その点について出久根達郎氏が文庫本文末で解説している内容が興味深い。最後に据えられた妻のサイド・ストーリーの結末が爽やかな読後感をもたらしている。