Book Review 9-18医療 #グラフィック・メディスン
『#グラフィック・メディスン・マニフェスト マンガで医療が変わる』(MK・サーウィック、他著)を読んでみた。病院総合診療学会で紹介していたので購入してみた。
「グラフィック・メディスン」という言葉を調べてみると、2007年に英国のコミック・アーティストのイアン・ウィリアムズらを中心に提唱された概念である。「マンガの表現を通して医療を広く扱う試み」として、医療従事者だけでなく、他の分野の研究者や表現者が繋がる活動の場としても国際的に広がっている。我が国でも2018年に日本グラフィック・メディスン協会が設立され、2019年に本書が翻訳されるなど、マンガ文化を誇る我が国の特性を活かして、グラフィック・メディスンの活動が動き出している。2023年には『日本の医療マンガ50年史 マンガの力で日本の医療をわかりやすくする』が刊行されたそうだ。
この領域に詳しい者によると、「グラフィック・メディスン」とはマンガのジャンルではなく「概念」であるそうな。英語圏で「グラフィック・メディスン」を提唱したグループには医学教育に携わっている者が多く、医療従事者が患者に対し、医療情報を伝達するコミュニケーションのツールとして、また、将来の医療従事者に対する教育ツールとしての側面から発展してきた概念である。ワークショップやロールプレイにおいて、マンガをいかに活用するかという観点からも研究が進んできている。医療従事者と患者、それぞれの立場から心象風景を絵で表現し、それを共有する取り組みなども展開されている。医療や健康、病気にまつわる、言葉では表現しきれない領域があることを認識し、絵という表現を通しての癒し効果についても注目されている。
本書から引用。「グラフィック・メディスンは、健康と病気をマンガで表現するたくさんの方法を探求することで、「客観的症例報告」を阻止する。マンガは、病いが本当はどんな感じなのか教える素晴らしい方法である。」「『グラフィック・メディスン』は、医学、病い、障がい、ケア(提供する側および提供される側)をめぐる包括的な概念であり、数量化による捉え方(一般化)が進む中でこぼれ落ちてしまいかねない「個」のあり方に目を向け、臨床の現場からグラフィック・アートまでを繋ぐ交流の場を作り上げようとする取り組み。」「第1回グラフィック・メディスン・カンフェランスが2010年にロンドンで開催された。BMJに論文が掲載され、表紙を飾っている。」「その一環として、マンガをコミュニケーションのツールとして積極的に取り上げたり、マンガの制作を通して気持ちや問題を共有したりする活動が行われている。」
一言で言うと、難しい文章で伝えることよりもグラフィックの方がズーと伝達に優れているということである。この本を手に取って一番納得できたことは、グラフィック・メディスンについて分担執筆している著者たちの長くてわかりにくい文章を全く読まなかったことである(読む気が起こらないから)。代わりにグラフィックだけを読んでいた。もっとグラフィックを増やしてよ!
ネットでは、グラフィック・メディスンとして手塚治虫のマンガや『#コウノドリ』(産科医の未受診妊婦や切迫流産、淋病等を取り上げている)、『#アンサングシンデレラ』(総合病院に勤める2年目薬剤師の院内を駆け回る活動)、『#リウーを待ちながら』(以前にBook Review 3で取り上げた。富士山麓にある病院で働く女性内科医が吐血し昏倒した駐屯自衛隊員を診察し、同じ症状の患者が相次いで死亡したため市は封鎖される。一歩間違えると新興感染症が蔓延する日本の近未来になりかねない)が挙がっている。
私も活字ばかり追っていないで、優れたマンガにもっと触れた方がよいではないか思うようになった。