Book Review 14-3 数学 #素数の音楽

 

『#素数の音楽』(マーカス・デュ・ソートイ著)を読んでみた。著者はオクスフォード大学数学研究所教授。多数の専門書執筆のほか、新聞・雑誌に寄稿、BBCで数学番組を監修。本書は世界的ベストセラー。その他の著書に『知の果てへの旅』『レンブラントの身震い』など。2010年、科学への貢献に対し大英帝国勲章が授与される。

 

素数とは、その数自身との外には約数がない正の整数のことである。この素数に多くの数学者が捕らわれてきた。素数の出現はランダムのように見えるが、なにか法則がないかを探す。素数は謎に満ちた存在であるという発想自体がすごい。本書は「リーマン予想」を中心に語られる。最も重要な未解決問題だそうだ。リーマン予想とは素数の分布についての予測である。ゼータ関数も重要だ。

 

本書は1859年に提起された史上最高の難問「リーマン予想」に挑み、素数の出現する法則を得ようとして奮闘した天才たち(ヒルベルト、ハーディーとリトルウッド、コンヌ等)の姿を描くノンフィクションである。読んでみて、何となく、素数研究の流れはわかったが、今一つすっきりしない。

そこで本書を読み終わった後、偶々録画しておいた2009年11月にNHKハイビジョン特集素数の魔力に囚われた人々」として放映されたものを再視聴してみた。リーマン予想についてビジュアル(視覚)を用いてわかりやすく説明している。またこの難問と格闘した人物たちを登場させている。リーマン予想に没入するあまり精神に異常をきたしたジョン・ナッシュ(映画『ビューティフル・マインド』の主人公)やドイツの暗号「エニグマ」を解読したアラン・チューリング(同性愛の罪でホルモン療法を受け、その後自殺)等。数学者ヒュー・モンゴメリと物理学者フリーマン・ダイソンの偶然の出会いからリーマン予想と原子の動きが同じ数式に還元できること発見したエピソード等を紹介している。本書の著者マーカス・デュ・ソートイも出演している。

 

本書を読んでの感想は、リーマンはなぜ素数の出現法則をゼータ関数に置き換えたのだろうか。ゼータとは素数のまとまりのことだそうだ。そもそもはレオンハルト・オイラーによる関数の特殊値に関する重要な発見を、リーマンが応用したらしい。その理由がわからない(天才としての閃きなのか?)。ゼータ関数の数式については、難しすぎるので割愛した。

インド人数学者ラマヌジャンの章も印象深い。彼は純粋数学の正式な教育をほとんど受けていないが、極めて直感的かつ天才的な閃きにより、数学的解析、整数論、無限級数、連分数などのほか、当時解決不可能とされていた数学的問題の解決にも貢献した。死ぬ間際の逸話が印象的だ。見舞客が、話題が尽きて、さえないナンバーのタクシーで療養所に駆け付けたことを語ったところ、ラマヌジャンは一瞬でとんでもないと否定した。その数字は1729であった。それは「2つの立方数の和で表す方法が2通りある数」であり、「1729」は「タクシー数(taxicab number)」と言われる。1729=123(12×12×12)+13(1×1×1)=103(10×10×10)+93(9×9×9)。1から1728までの数字は、このような形で表すことはできないので、1729は最小のタクシー数なのである(この逸話からそう呼ばれるようになったのだろう)。数学界では有名な逸話らしい。

素数がインターネットセキュリティ・暗号資産の管理に重要な役割を果たしているのは知っていた(開発者の頭文字をとってRSAと呼ぶ)が、最近では楕円曲線を使った暗号作成が行われるようになっているそうだ。

 

本書を読んだことで、高校以来、あまり接していなかった数学にまた興味が湧いてきた。