Book Review 27-10ノンフィクション #OSO18を追え

 

『#OSO18を追え』(藤本靖著)を読んでみた。著者は北海道標津町在住。
NPO法人「南知床・ヒグマ情報センター」前理事長、現・主任研究員。

 

日本中の住宅地に熊が出没している。松前町近郊でも、つい最近、裏山の畑で仕事中の老夫婦が襲われている。糖尿病で診ている患者さんの体重が増えていたので理由を聞いたら、羆(ヒグマ)が出て襲われると危険なので配偶者に散歩を禁止されたからだと言われた。もう他人ごとではない。


本書は、2019年夏、北海道東部で、牛を次々と襲う謎の羆(OSO18)が確認された。捕獲に乗り出したハンターたちの数年に及ぶ闘いの5年にわたる記録である。ちなみに藤本氏は銃を持たない。

 

「OSO18」とは、肉食に目覚めた羆で、標津町オソベツ付近に出没する足跡が18㎝幅であるところから命名されたようだ(推定体重400kg)。「OSO18」は特別な羆であったのか。最後まで読むと、本来は普通の羆であったことが判明する(最期は人間の仕掛けた違法罠で衰弱し仕留められた)。人間中心の考え方が森林環境を激変させ、本来草食で臆病であった羆が、人間によって放置されたエゾシカの屍肉を漁ることで肉の味を覚え、一気に肉食化して、本来の主食である森の植物や果実には目もくれず、動物を襲うようになったのだ。ということは、人間が考えを変えない限り、次から次への第2、第3の「OSO18」が出現することを意味している。

「地球沸騰」にしても「肉食羆」にしても、人間本位の快適さを求め続ける活動の予想もしなかった結果であったのだ。私たちはこの点を考え直さなければならない時期に来ている。