Book Review 18-6 警察小説 #首木の民

『#首木の民』(誉田哲也著)を読んでみた。著者は2003年『アクセス』で第四回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。『ストロベリーナイト』、『姫川玲子シリーズ』や『武士道シックスティーン』などの『武士道シリーズ』などがある。

 

本書を警察小説の枠に入れたが、半分以上のページに経済についての蘊蓄が書かれている。一つの窃盗・殺人事件をネタに経済を語るのが目的のようにも見える。容疑者からマネタリーベース、マネーストック、流通している通貨金額量、国債などについての解説が警察官に語られる(あなたは説明することができますか?)。著者の経歴が学習院大学経済学部卒業ということが何か関係があるのかも。犯人探しやミステリー興味で読むと失望するかもしれない。文末の参考文献は殆どが経済や財務省関係の本である。『ザイム真理教』(森永卓郎著:経済アナリスト、獨協大学経済学部教授)もその中に入っている。森永氏はJT入社し、すべての予算を財務省に握られて「絶対服従」の掟を強いられた経験を「ザイム真理教」という言葉を創作して、財務省が国民生活を破壊していったメカニズムを語っている。(日本銀行が好き勝手に増発できる国債で日本経済を潤せという主張であるが、残念ながらどこまでが真実なのか私には判断できない)。

 

タイトルになっている「首木」とは、本来複数の馬などに車を引かせる際、首と首をつなぐ横木のことを言い、そこから転じて「クビキ」は自由を束縛するという意味で使われる。ここでは日本国民にかけられた束縛を指している(結論を言えば「税」のことである)。一貫して財務省批判になっている。

 

本書の内容に移ろう。大学の客員教授Kが窃盗と公務執行妨害の容疑で逮捕された。運転する車の中から、血の付いた他人(Ki)の財布が発見されたのだ。Kは内閣府が設置する経済財政諮問会議に参加したこともある経済政策通だが、警視庁のSに対し「公務員を信用していない」と言い、取調べは進まなかった(ここで経済学の蘊蓄と財務省批判が語られる)。一方、財布の持ち主を捜していた警察官Nは、フリーライターのKiに行き着く。Kiは交通事故を探っていたが、その事故には財務省のある人物が絡んでいた・・・。

 

犯人推理や殺人の動機についてはよくある話で、ミステリーを楽しむというよりも経済学の勉強するつもりで読んだ方がよいかもしれない。