Book Review 8 邯鄲の島遥かなり(上、中、下)

 

『邯鄲の島遥かなり(上、中、下』(貫井徳郎著)を読んでみた。

厚岸情報局所蔵の本で読破した(札幌市では予約が多く、借りられないため)。これらの本を松前図書館で予約すると、道内の図書館で空きのあるところ(厚岸情報局)から時間をおいて各3冊が送られてきた。このように北海道の図書館網は素晴らしい。札幌市立図書館網を当てにするよりも、素早く新刊に触れられ、広い分野の本を読破できる。

 さて、話の前提。島(神生島)に美男が生まれ、島中の女を引き付け、沢山の子供が生まれる。その家系を一ノ屋という。子孫は体のどこかに唇型の痣をもつ。その子孫の明治維新から令和に至る150年間の様々な物語が1,500頁に渡って綴られる大河小説である。初めての普通選挙、島の英雄の死。血族の営みの影で、時代は動いていく。容赦なく戦争の足音が近づく。第二次世界大戦で大怪我を負った者。島の復興に奮闘する者。野球小僧の都大会への挑戦(長嶋茂雄に憧れている)。女性に興味が持てない一ノ屋の跡取りの苦悩。島の火山の爆発。東日本大震災後のボランティア活動。

 読み始めたときは、神生島は沖縄付近の島と思っていたが、島で火山爆発が起こり、東京都内に住民が避難していることから、三宅島と思われる。(2000年6月26日から地震活動が始まり、西方沖で海底噴火。低温の火砕流発生。火山灰多量。火山性ガスの噴出は1日あたり数万トンに及ぶ。全島民約3,800人が4年5か月の間島外避難。火山活動は継続中。) 最終章では東日本大震災を経て、平成から令和元年5月1日で話は終わっている。

 日本の近代史と自分自身のこれまでの人生とを重ね合わせて振り返るきっかけになるだろう。