Book Review 4

『トヨトミの野望』と『トヨトミの逆襲』を読んだ。

覆面作家の著作である。著者は小説という形で、創業家が語る「神話」の裏側を描こうとした。トヨタ自動車の首脳部の行動や思惑を言葉にしている。人名は変えてあるが、ほとんどが類推できるようになっている。巨大企業の運営が想像を絶するほど大変であることがわかる。それが世襲で凡人に回ってきて、巨大企業のかじ取りができず右往左往している様子が描かれる。登場人物を推測してウキペディアで検索するとその人物の背景はほとんどそのまま使われている。政治工作や女性関係など次々登場し、著者が覆面で書かなかったら殺されかねない内容になっている。続編『トヨトミの逆襲』では、主人公が創業家の御曹司であり、話は2016年からはじまるまさに「今」を描いている。ソフトバンクの孫氏と思われる人物も登場し、車製造とIT会社の未来社会に対する展望の違いが浮き彫りになる。この本を読んだ後、トヨタ自動車のニュースに接すると、次々と襲い掛かる試練に振り回されている裏の側面を想像してしまう。

一流企業であっても、ドロドロの権力闘争が繰り広げられていることなど、珍しくもないだろう。この小説は組織が機能不全に陥るのを食い止めている企業のぎりぎりの経営努力の現場が描かれている。現実にトヨタ自動車が発売した燃料電池車「MIRAI」がたどった軌跡をなぞっている。

医学界も然り。